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会社は、未来を創る人へ引き継ぐ/事業承継|~地域企業が、日本の未来を創る~

事業承継というと、多くの人は、「誰に会社を引き継ぐのか」という話から始めます。親族か。社員か。M&Aか。しかし私は、その前に考えるべきことがあると思っています。なぜ会社を引き継ぐのか。その答えが見えなければ、誰に承継するかという議論は、本質から外れてしまいます。

地域企業は、日本の未来を支えている

私は、日本を支えているのは東京の大企業だけではないと思っています。全国には、それぞれの地域に根ざした中小企業があります。地域で人を雇い、地域で税金を納め、地域の取引を支え、地域の若者を育て、地域の暮らしを守っている。こうした地域企業があるからこそ、人はその地域で生活し、家庭を築き、子どもを育てることができます。私は、地域企業こそが、日本の未来を支える土台だと考えています。

地域企業は、産業だけでなく文化を守っている

地域企業が守っているものは、売上や利益だけではありません。その地域の文化や伝統、そしてコミュニティそのものです。私が暮らす熱海には、「こがし祭り」という伝統ある祭りがあります。祭りの作法。役割。準備の段取り。山車の扱い方。これらはマニュアルだけでは伝わりません。親から子へ。地域の大人から若者へ。一緒に祭りへ参加しながら受け継がれてきました。

しかし近年、この祭りは少しずつ規模が小さくなっています。理由の一つは、子どもの数が減っていることです。教える人はいても、受け継ぐ子どもが少ない。その結果、祭りだけでなく、地域の知恵や文化まで失われようとしています。これは熱海だけの問題ではありません。全国各地で同じことが起きているのではないでしょうか。

企業がなくなると、地域も弱くなる

地域の祭りは、地域企業に支えられています。地元企業は協賛し、社員が準備に参加し、経営者は地域活動の中心となり、商店街や町内会と連携しながら地域を支えています。企業は、お金を稼ぐだけの存在ではありません。地域に人を集め、人と人をつなぎ、地域コミュニティを形成する存在です。

一社の企業が廃業すると、雇用が失われます。若者が地域を離れます。子どもの数が減ります。祭りの担い手が減ります。地域の伝統も受け継がれなくなります。企業の廃業は、一つの会社がなくなることではありません。地域の未来が少しずつ失われていくことでもあるのです。

だから私は、親族内承継を第一に考えます

私は、可能であるなら、親族内承継が最も望ましいと思っています。それは、「創業家だから」ではありません。経営者の家庭に育った子どもは、知らず知らずのうちに親の背中を見ています。資金繰りに苦しむ姿。従業員を守ろうとする姿。取引先との信頼を大切にする姿。利益より信用を優先する判断。誰も教えなくても、家庭の中で、経営者とは何かを学んでいます。私は、それも一つの帝王学だと思っています。学校では教えられない、家庭でしか学べない経営教育です。

さらに、親族には会社を守る覚悟が生まれやすいという強みがあります。会社の歴史を知り、親の苦労を知り、従業員を知り、地域とのつながりを知っている。だから、会社を「自分のもの」としてではなく、「守るべき存在」として受け止めやすいのです。そして私は、長い歴史を持つ会社には、ご先祖や先代が積み重ねてきた想いが受け継がれていると考えています。それは特別な力を意味するのではありません。「自分一人で経営しているのではない。」その感覚が、苦しい時代を乗り越える支えになるのだと思います。

次に社員承継

親族に後継者がいないのであれば、私は社員承継を勧めます。社員は会社の理念を知っています。従業員を知っています。取引先との信頼関係も理解しています。社内からも受け入れられやすく、会社の文化をそのまま未来へ引き継ぐことができます。もちろん、優秀な社員が優秀な経営者になるとは限りません。だからこそ、早い段階から経営者教育を行うことが重要です。

最後は、未来を創る第三者へ

親族にも社員にも後継者がいない。それなら廃業でしょうか。私は、そうは考えません。地域を変えたい。地域企業を育てたい。新しい価値を創造したい。そんな志と才能を持つ若い経営者に会社を託すことも、大きな社会貢献だと思っています。会社には、技術があります。信用があります。顧客があります。地域とのつながりがあります。そこへ、若い世代の行動力や発想力が加われば、地域企業はさらに成長できます。だから私は、第三者承継やM&Aも、会社を終わらせる制度ではなく、未来を創る制度だと思っています。

私からの提言

私は、会社を誰に渡すかではなく、誰なら未来を創れるのか。その視点で事業承継を考えるべきだと思っています。第一に、家庭の中で帝王学を学び、会社を守る覚悟を持ちやすい親族へ。次に、理念と文化を理解し、社員から信頼される社員へ。そして最後に、地域を変革する情熱と才能を持つ第三者へ。

地域企業は、利益を生み出すだけの存在ではありません。地域産業を守り、地域文化を守り、祭りを守り、人と人とのつながりを守っています。地域企業が未来へ受け継がれることは、一社の会社を残すことではありません。地域を残すことです。日本を残すことです。だから私は、事業承継とは経営者個人の問題ではなく、地方創生そのものだと考えています。

会社は、未来を創る人へ引き継ぐものだ。この一社一社の承継が、日本各地の産業を守り、文化を守り、地域コミュニティを守り、次の世代へと受け継がれていく。私は、その積み重ねこそが、日本の未来を創る力になると信じています。

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