熱海のリゾートマンションを相続放棄する前に|地価回復と活用の可能性(後編)
ここまでは、相続放棄という制度についてご説明してきました。では、実際に熱海のリゾートマンションを相続する場合はどうでしょうか。
「管理費だけがかかる。」「子どもは利用しない。」「売れないなら相続放棄した方がいい。」そのように考える方も少なくありません。確かに、バブル期に建設されたリゾートマンションの中には、利用されなくなり、「負動産」と呼ばれるようになった物件もあります。
しかし、現在の熱海は、バブル崩壊直後とは大きく状況が変わっています。相続を考えるうえでは、「現在の熱海」を知ることも、とても大切です。
熱海はいま、「再び選ばれる街」になりつつあります
熱海というと、「バブル崩壊後に衰退したリゾート地」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在の熱海は、その頃とは大きく変化しています。その背景には、
- 東京駅から新幹線で約40〜50分という交通利便性
- テレワークや二拠点生活の定着
- 首都圏企業によるサテライトオフィス利用
- マネージャークラスを中心とした中長期滞在需要の増加
- インバウンド需要の回復
- ホテルや宿泊施設の建設ラッシュ
などがあります。私自身、熱海へ移住して以来、街を歩いていると新しいホテルやマンションの建設現場を目にする機会が増えました。以前は観光客が中心だった街に、スーツ姿で長期滞在するビジネスパーソンや、移住を検討する方々の姿も多く見られるようになっています。熱海は、「観光する街」から、「暮らす・働く・滞在する街」へと、新しいステージへ進み始めていることを実感しています。
地価も回復傾向にあります
こうした需要を背景に、熱海市の公示地価も近年は回復傾向にあります。例えば、近年の公示地価を見ると、次のように推移しています。
| 年 | 坪単価 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2024年 | 約34.4万円 | +2.97% |
| 2025年 | 約35.7万円 | +3.85% |
| 2026年 | 約36.7〜38.7万円 | +2.78〜4.32% |
商業地では前年比8%を超える上昇地点もあり、熱海の不動産市場は新たな局面を迎えています。もちろん、すべてのリゾートマンションの価格が上昇しているわけではありません。築年数や立地、管理状態、修繕積立金の状況などによって評価は大きく異なります。しかし、「リゾートマンションだから価値がない」と一括りにできる時代ではなくなってきています。
相続放棄を考える前に確認したいこと
相続放棄は、一度受理されると原則として撤回することができません。だからこそ、まずは次のような可能性を確認してみることをおすすめします。
① 売却できる可能性はないか
市場価格を調べてみると、思っていた以上の価格で売却できるケースもあります。特に駅から近い物件や眺望の良い物件は、現在も一定の需要があります。
② 長期賃貸として活用できないか
近年の熱海では、移住希望者、マンスリー利用、二拠点生活、ワーケーション、管理職クラスの長期滞在など、新しい賃貸需要が増えています。家賃収入によって管理費や修繕積立金を補えるケースもあります。
③ ご家族のセカンドハウスとして残せないか
最近では、「毎週ではないけれど、月に一度は海を見ながら過ごしたい。」というライフスタイルも珍しくありません。相続したマンションが、ご家族の新しい思い出をつくる場所になることもあります。
④ リフォームによる価値向上
築年数が古くても、水回りの更新、内装リフォーム、Wi-Fi環境の整備、家具・家電付き賃貸への転換などによって、賃貸需要や資産価値が向上する可能性があります。
「利用していない」と「価値がない」は違います
相続のご相談では、「親が何十年も利用していない。」「管理費だけを払い続けている。」という理由だけで、「価値のない不動産」と判断されているケースも少なくありません。しかし、不動産の価値は、その地域の市場環境によって変化します。現在の熱海のように、人の流れや働き方、観光需要が変わっている地域では、これまで利用されていなかった不動産が、新たな価値を持つこともあります。
「負動産」から「地域資産」へ
私は、熱海のリゾートマンションを単なる「相続財産」とは考えていません。地域に人を呼び込み、新しい暮らし方を支え、地域経済を活性化する可能性を持った「地域資産」でもあると考えています。
もちろん、すべての物件が活用できるわけではありません。しかし、「使われていないから価値がない」と決めつける前に、「この不動産を地域のために、次の世代のために、どう活かせるだろうか。」という視点を持つことが、これからの相続ではますます大切になるのではないでしょうか。
「負動産」を「活動産」へ
行政書士オフィスMIRAIでは、「課題を価値に変え、未来へつなぐ。」という理念を掲げています。私は、都会への一極集中ではなく、それぞれの地域に人が集まり、自分らしい暮らしを選べる社会を目指しています。
熱海には、海や温泉、美しい自然、首都圏からのアクセスなど、多くの魅力があります。その魅力を活かしながら、使われなくなったリゾートマンションを、地域に必要とされる住まいへ。「負動産」を、未来へ価値を生み出す「活動産」へ。それが、私たち行政書士オフィスMIRAIが目指す相続支援のかたちです。
まとめ
相続放棄は、借金などの負担を避けるための大切な制度です。しかし、リゾートマンションについては、「放棄するか、相続するか」という二択だけではありません。現在の熱海では、移住需要や長期滞在需要、地価の回復などを背景に、不動産市場が少しずつ変化しています。
だからこそ、相続放棄という結論を出す前に、その不動産が持つ可能性を見つめ直してみてはいかがでしょうか。相続は、財産を受け継ぐだけでなく、地域の未来へ価値をつないでいく機会でもあります。「負動産」を「活動産」へ。その一歩が、ご家族の未来と地域の未来の両方を豊かにしていくと、私たちは考えています。
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