相続放棄だけでは解決しない理由|熱海のリゾートマンションを相続放棄って、本当に正解ですか?(前半:法律・実務編)
「子どもに迷惑をかけたくない。」「管理費だけ払い続けている。」「もう誰も利用しない。」熱海へ移住して以来、このようなご相談を受ける機会が増えました。
バブル期に建設されたリゾートマンションの中には、高齢化や相続を迎え、「誰も住まない」「維持費だけがかかる」という状況になっている物件も少なくありません。そのため、「相続放棄すれば解決するのでは?」と考える方も多くいらっしゃいます。
確かに、相続放棄は借金などの負担を引き継がないための有効な制度です。しかし、「相続放棄をすればすべて解決する」と考えるのは早計かもしれません。また、現在の熱海は、バブル崩壊直後とは状況が大きく変わっています。不動産市場や移住需要も変化しており、「負担」と思われていたリゾートマンションが、新たな価値を生み出す可能性もあります。
この記事では、まず相続放棄の制度や手続きを分かりやすく解説し、そのうえで後半では、熱海のリゾートマンションを取り巻く現状と活用の可能性について考えていきます。
第1章 相続放棄とは?
相続放棄とは、家庭裁判所へ申述することにより、相続人としての権利や義務をすべて放棄する制度です。相続財産には、預貯金・不動産・株式・自動車などの「プラスの財産」だけでなく、借金・ローン・保証債務などの「マイナスの財産」も含まれます。
相続放棄をすると、これらの財産を一切引き継がず、法律上は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。なお、相続放棄は自己判断で行うものではなく、相続開始を知った日から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続には3つの選択肢があります
相続が開始すると、相続人には次の3つの選択肢があります。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 単純承認 | すべての財産・借金を引き継ぐ |
| 限定承認 | 相続財産の範囲内で借金を負担する |
| 相続放棄 | 財産も借金も一切相続しない |
限定承認は相続人全員で行う必要があるなど手続きが複雑なため、実際には単純承認か相続放棄が選択されることが多くなっています。
第2章 相続放棄の流れ
相続放棄は、次のような流れで進みます。
- ① ご家族がお亡くなりになる
- ② 相続財産を調査する
- ③ 借金・不動産・預貯金などを確認する
- ④ 相続開始を知った日から3か月以内に判断する
- ⑤ 必要書類を収集する
- ⑥ 家庭裁判所へ相続放棄を申述する
- ⑦ 家庭裁判所から届く照会書へ回答する
- ⑧ 相続放棄申述受理通知書が送付される
- ⑨ 必要に応じて「相続放棄申述受理証明書」を取得する
受理証明書は、金融機関や債権者などへ相続放棄を証明する際に必要となることがあります。
主な必要書類
一般的には次の書類が必要になります。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の戸籍(除籍)謄本
- 申述人の戸籍謄本
- 住民票除票など
相続順位によって必要書類が異なるため、事前の確認が重要です。
第3章 相続放棄のメリット
① 借金を引き継がなくて済む
最も大きなメリットです。住宅ローンや事業資金、保証債務などを相続しなくて済みます。
② 相続トラブルから距離を置ける
遺産分割協議に参加する必要がなくなり、相続人同士の争いに巻き込まれにくくなります。
③ 利用予定のない不動産を取得しないで済む
空き家や利用予定のない別荘などを取得せずに済む場合があります。
第4章 相続放棄のデメリット
ここは誤解されやすいポイントです。
① 相続放棄したら「すべて終わり」ではありません
「放棄したから今日から何もしなくてよい」というわけではありません。令和5年4月の民法改正により、相続放棄をした人は、現に占有している相続財産について、次の管理者へ引き渡すまで保存する義務を負うことがあります。例えば、自宅に保管している動産や実際に管理している建物などについては、適切な管理が求められる場合があります。
② 次順位の相続人へ相続権が移る
例えば、子ども全員が相続放棄すると、親、兄弟姉妹、甥・姪など、次順位の相続人へ相続権が移る場合があります。そのため、相続放棄を検討する際には、自分だけでなく親族全体への影響も考える必要があります。
③ 全員が放棄したらどうなる?
「誰も相続しないなら、そのまま国のものになる。」このように思われる方も多いのですが、実際はそう単純ではありません。相続人全員が相続放棄した場合には、家庭裁判所へ申立てを行い、相続財産清算人が選任されることがあります。相続財産清算人は、財産の管理、債務の支払い、財産の売却、残余財産の国庫帰属などの手続きを行います。つまり、「放棄したら終わり」ではなく、その後にも法律上の手続きが続く場合があるのです。
コラム:相続放棄は慎重に判断しましょう
相続放棄は、一度受理されると原則として撤回することはできません。そのため、借金はいくらあるのか、預貯金はどれくらいあるのか、不動産に価値はあるのか、将来的な活用方法はないのかなどを十分に確認してから判断することが大切です。特に不動産については、「現在利用していない」という理由だけで価値がないとは限りません。その地域の将来性や市場環境によって、評価は大きく変わることがあります。
まとめ
ここまでは、相続放棄という制度についてご説明しました。では、熱海のリゾートマンションの場合はどうでしょうか。バブル期には「負動産」と言われたリゾートマンションですが、現在の熱海では、移住や二拠点生活、観光需要の高まりを背景に、その価値が見直され始めています。
後編では、「熱海のリゾートマンションを相続放棄する前に考えたいこと」をテーマに、現在の熱海の不動産市場や活用方法についてご紹介します。
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